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「“質感のミスマッチ”こそ最先端なリップトレンド」

近年、リップに対する消費者のニーズは刻々と変化しています。中でも、塗った時の使用感と仕上がり感が相反する概念の商品に一定の支持が集まる傾向が見受けられます。
今回は、そんなリップトレンドについてご紹介します。


Beaumax通信
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「“質感のミスマッチ”こそ最先端なリップトレンド」

近年、リップに対する消費者のニーズは刻々と変化しています。中でも、塗った時の使用感と仕上がり感が相反する概念の商品に一定の支持が集まる傾向が見受けられます。
今回は、そんなリップトレンドについてご紹介します。

例えば、使用感としては潤う感覚でするーっと塗り広げられるのに仕上がりとしてはソフトマットな質感を楽しめるものやシアーな使用感と思いきや高発色を演出しそれが持続するものなど潤い質感=シアーなツヤ感を楽しむもので、色持ちは比較的しにくいという固定概念が覆される「融通無碍(ゆうずうむげ)」な商品が次々と定番化しています。

これはコロナ禍のマスク生活で色持ち重視のニーズが定着した背景が大きくあるとは思いますが、単純に消費者がよりわがままになっていることも挙げられるかもしれません。


*融通無碍(ゆうずうむげ)
固定概念にとらわれず、自由な様子を表す言葉。固定観念に囚われるステレオタイプに対し、融通無碍はそれに囚われない自由な発想や行動を指します。



「軽やかに見せたいけど存在感は出したい」 「唇が渇くのは嫌だけど、マットリップを楽しみたい」

など、ひと塗りで多くの満足度を得たいと考えるのは当然の流れでしょうか。

確かにマスク生活で「重い・息苦しい・べたつく」ことは究極のNGとされたため塗った感じがしないのに仕上がりはマットであるリップの市場ニーズは生まれるべくして生まれたと思います。


また、マスク生活が明け自分らしく盛るためのリップとして透け感と色残りのWタッグを叶えるティントタイプのリップが台頭してきたのも、“仕上がりのいいとこ取り”をしたいという同様のニーズの顕れのように思います。

「透け感はあるけど色はしっかり残る」という、快適性、多機能性兼ね備えつつ、“映え”“ナチュラル盛れ”が叶うという妥協なき追求は令和の現代ならではです。
というのも、2010年頃までティントリップというのは落ちない反面「乾く・ムラになる・色が変わる」というネガティブな印象の商品も多く、質感や発色にこだわりの強い日本女性には敬遠されやすいアイテムでした。また、文化的に化粧直しの習慣が根付いており、落ちない=人工的で不自然というようなある意味でうつろいや儚さを良しとする日本的な美意識に反するという点もうっすら背後にあったように思います。


テクノロジーの進化と共に、“いいとこ取り”を目指すフォーミュラが登場してきたこともありながら、ここまでティントリップが市民権を得たのは文化と価値観のアップデートと表裏一体なのだと考えると面白いですよね。



トレンドは、「進化しながらループし続ける」

「朝つけて、夜まで落ちない」というコピーと共に落ちないリップの代表格として2000年代に一世を風靡したマックスファクターのリップフィニティを覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。
24時間の色持ちを謳った画期的な商品で、色持ちを重視したマットなカラー層を塗った後にツヤを与えるトップコートを重ねるという2ステップ式のロングラスティングリップでした。
2025年、同様の2ステップ式の落ちないリップがシャネルから6月にリリースされ、その使用感も相まって大きなバズりを生んでいるのはトレンドの移り変わりとして興味深いところです。

兎にも角にも、今後も「ビジュアル、使い心地、持ち、トレンド性」全てを妥協せずに求める市場ニーズはなくならないでしょうから、「質感のミスマッチこそ最先端」を開発起点においたリップのトレンドは更に複雑で面白くなると思います。